不倫慰謝料を配偶者と不倫相手の双方から受け取る「二重取り」は可能か

作成者:所長 弁護士 安藤伸介

最終更新日:2025年04月09日

1 不倫慰謝料は不倫をした配偶者と不倫相手が共同して支払うもの

 結論から申し上げますと、法律上、不倫慰謝料を配偶者と不倫相手の双方から受け取る「二重取り」はできません。

 やや複雑になりますが、不貞行為は共同不法行為であり、不倫をした両名はいずれも不倫慰謝料全額の支払い義務を負います。

 ただし、2人が支払った金額の合計額が不倫慰謝料の金額に達すると、それ以上の支払いを求めることができなくなります。

 さらに、不倫をした2人のうち、片方の加害者が自身の責任割合を超えて慰謝料を支払った場合、もう一方の加害者に対して、責任割合を超えて支払った分を請求することができます(求償権の行使)。

 以下、不倫慰謝料が発生する法的な仕組みと加害者の支払い義務、および求償権について説明します。

2 不倫慰謝料が発生する法的な仕組みと加害者の支払い義務

 不倫慰謝料は、法律上は不法行為に基づく損害賠償金です。

 不貞行為によって、不倫をされた側が被った精神的損害を賠償するためのものです。

 不貞行為は、不倫をした配偶者と不倫相手の2人が一緒に行うものです。

 法的に表現をすると、不倫をした2人による共同不法行為となります。

 共同不法行為をした者は、民法719条によって「各自が連帯してその損害を賠償する責任を負」います。

 また、共同不法行為者は、被害者である不倫をされた側の配偶者に対して、それぞれ不倫慰謝料全額を支払う義務を負います。

 片方が慰謝料の全部または一部を支払うと、その限りにおいてもう一方の加害者が被害者に対して慰謝料を支払う義務が消滅します。

 そのため、不倫慰謝料の二重取りはできないことになります。

3 求償権について

 共同不法行為の場合、加害者間においては、それぞれの過失や損害発生への寄与割合などによって、負担割合が存在します。

 不倫慰謝料の場合、特段の事情がなければ、不倫をした者の負担割合は50:50とすることが多いです。

 仮に不倫慰謝料が100万円である場合、不倫をした者はそれぞれ50万円ずつ負担します。

 そして、不倫相手が全額(100万円)を支払った場合には、不倫相手から不倫をした配偶者に対して50万円の支払いを求めることができます。

 これが求償権です。

 不倫慰謝料における求償権についてまとめておりますので、こちらもご覧ください。

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