接触禁止条項に違反するとどうなる?違約金の相場はある?
不倫がバレてしまい慰謝料を支払うことになり、示談内容に「接触禁止条項」が盛り込まれて不安があるという方もいらっしゃるでしょう。
内容に納得できない、あるいは接触禁止条項を結んだ後に違反してしまったというケースも見受けられます。
示談成立前なら納得できないことにはサインしないことが重要ですが、契約後に違反してしまった場合は原則として合意した違約金を支払う必要があります。
今回は、接触禁止条項について、違反した場合の相場、離婚後の違反でも支払うべきか等について解説します。
1 不倫慰謝料請求の接触禁止条項とは
不倫慰謝料に関する示談をする場合、「接触禁止条項」を設けることがよくあります。
接触禁止条項がどのような内容なのか、その概要について見ていきましょう。
⑴ 接触禁止条項とは?
接触禁止条項は、不倫相手との連絡を断つための約束で、再度の不倫を防ぐ効果があると言えます。
多くの場合は、「離婚しない」と決断した配偶者から要求されます。
今後の夫婦生活に一切干渉しほしくないという思いから、接触禁止条項を設けます。
また、離婚を決断した夫婦の場合でも、その後の不倫相手との再婚が嫌だという場合に、接触禁止条項を要望されるケースもあります。
文言の例としては、以下のようなものがあるでしょう。
・ 乙は丙に対し、今後一切連絡を取らない
・ 乙と丙は、メール、SNS、電話、手紙その他いかなる手段を用いても一切接触しない
・ 乙は携帯電話から乙の情報の一切を削除する
・ 乙は丙に業務上正当な理由がない限り連絡しない(仕事で関係がある場合)
※(乙は不倫相手、丙は不倫した配偶者を想定)
接触禁止条項には特に期間が設けられることはありません。
「今後一切」という文言が用いられることも多く、基本的に期間による制限はないと考えるべきでしょう。
⑵ 違反のペナルティが規定される
接触禁止条項には、ペナルティが科されていることも多くあります。
例文としては、「接触禁止に違反した場合、200万円をお支払いいただきます。」などの文言です。
民法420条1項では、賠償額の予定についての条文があります。内容としては、「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。」とするものです。
これは将来的な契約違反に対し予め損害賠償を決めることを認める内容となります。
つまり、慰謝料に加えて、接触禁止条項違反等があった場合には違約金を定めるのも法的に可能ということになるのです。
2 接触禁止条項の違約金の相場
⑴ 違約金に相場はない
接触禁止条項を守らなかった場合に違約金を科すこと自体は可能であるとしても、違約金に相場などはないのでしょうか?
まず、違約金に関しては、交渉による和解、そして訴訟による和解のどちらの場合でも「合意」によって定めることが可能です。
そのため、当事者が納得すればいくらでも原則として有効ということになるでしょう。
不倫慰謝料の金額にも左右されますが、「連絡をとる」「会う」ことに関しては20~50万円前後、再度不貞行為を行うことに関しては〜100万円程度の違約金を盛り込むことが多いようです。
とはいえ、相場というものは無いに等しいともいえます。
裁判例などでは、これ以上に大きい違約金が認められたケースもあります。
⑵ 違約金が高額すぎる場合
接触禁止条項に違反してしまった場合、違約金を支払わなければいけません。
しかし、不倫慰謝料が300万円だったのにもかかわらず、違約金が1000万円など高額すぎる場合、支払う必要があるのでしょうか?
結論からいうと、不倫慰謝料の違約金が高額すぎる場合は、規定通りの金額を支払わなくても済む可能性があります。
もし、高額で支払えないということでお悩みの場合は、弁護士に相談いただくのが一番です。
3 離婚後の違反の場合
婚姻中に接触禁止条項を盛り込んだ示談を成立させた場合でも、「離婚後の違反なら許されるのでは?」と考える方も多いでしょう。
「離婚後に不倫相手とよりを戻した」というケースでは、接触禁止上条項違反となるのでしょうか?
結論からいうと、接触禁止条項に関しては婚姻中のみ有効となります。
離婚後まで不倫相手と会ってはいけないと要求することはできませんので、違約金が科されることもないでしょう。
「不倫相手と離婚後に交際してほしくない」という配偶者の気持ちから、離婚調停中の示談交渉で接触禁止条項を入れること自体は可能です。
しかし、離婚後は接触禁止条項の効力がなくなることには変わりありません。
「離婚後も接触を禁じる」「離婚後の交際を禁止する」というような文言を入れても、そもそも無効となると考えられます。
4 接触禁止条項以外の違約金は有効?
和解条項として、接触禁止条項以外の条項が設けられることもあるでしょう。例えば、以下のような内容です。
・謝罪や謝罪文を求めるもの
・職場を辞めることを求めるもの
・住む場所の移動を求めるもの
謝罪や謝罪文を求めるケースについては、違反する余地がないといえます。
通常は、示談の際に謝罪の文言を入れるなどの措置をしているためです。
謝罪自体を拒む場合は、示談そのものが成立しないと考えられます。
他方で、職場を辞める・住む場所の移動を求めるなどの条項は、公序良俗に反するとして無効を主張することができる可能性があります。
もっとも、一度示談書を取り交わした以上、その内容を守らなかったために違約金を支払わなければならないという考え方もあります。
接触禁止条項以外に違約金が設定されている場合は、弁護士に相談してみましょう。
5 納得できない内容には合意せず、弁護士へ相談を
どのような条項にもいえることですが、納得できない内容についてはサインしないことが大切です。
違約金に関してはあまり注目していない方が多いのが実情ですが、将来的に払う可能性のあるお金です。
例えば、違約金の金額が1000万円となっている場合、そもそも過大であるとして拒否するべきでしょう。
慰謝料の金額だけでなく違約金の金額に関しても、支払える金額なのか、条件として不当ではないか等をきちんと考えて合意すべきです。
違約金が大きすぎる場合は減額できる可能性もあるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談するのが賢明です。
また、これから示談書を交わすという場合に「接触禁止条項が不安」というケースもあるでしょう。
弁護士に確認した上で示談を成立させた方がお互いに安心でき、終局的な解決が望めます。
不倫問題を早急に終結させるためにも、不安がある場合は弁護士にご相談ください。